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黄金のミューン

act 1 黄金(こがね)のミューンと漆黒のアイラ


その「世界」は4つの「国」に分かれていた。
「北の国」
「南の国」
「西の国」
「東の国」

その4つの国々の人々は、
それぞれの国ごとに特徴があった。

北の国には、ひとつの身体に二つの「性」を持つ人々。
つまり、両性として生まれ、
大人になると自然にどちらかの性に落ち着く宿業があった。

南の国には、
ひとつの身体に二つの種の「生」を持つ人々。
日の光の下では、人間としての生を生き、
夜の闇の中では、獣の生を生きなければならない、
変身能力の宿業を持っていた。

西の国では、ひとつの身体に二つの「人格」を持つ人々。
その国に生まれる人々は必ず相反する人格を持つ宿業があった。

東の国には、
二つの身体と二つの心を持つ人々。
その国に生まれる人々は、必ず双子で生まれた。
顔も体つきも性格すら似てないながらも、
何故か生涯離れられない宿業を抱えた双子として生まれた。

その宿業がある故に、
全ての国々に生まれるものは、
他の国の人と交わってはならない。
もし、宿業に逆らって交わってしまったものには、
異形の子供が生まれる、と言われる。
その呪われし「忌み児」と二親は、
その国から追放された。

故に実はこの世界には、
決して明らかにはされないながらも、
もうひとつ「国」があった。
4つの国の中央には広大な森があり、
その森に住まう人々。
「森の民」には、追放者が住んでいる、と言われる。


酒場はどこも混雑している。
こんな国の外れにある、場末の酒場ならなおさら。
でもこんな場所なら、食事は不味そうだったが、
仕事と、宿にありつける筈だった。
規格外の人間には、こんな場所で仕事を探すしか、
生きる術は無い。

「ここ」では、2つの仕事が手に入った。
女か、綺麗な男しか出来ない、夜売りの仕事。
それと、自分の「力」と「技」を売る傭兵の仕事と。
どの国の国主も国境を守る為に正規兵を集ってはいたが、
どこか身元の胡散臭いモノは、こんな場所で傭兵の仕事を探し、
胡散臭い仕事をしている金持ちがこんな場所で
用心棒を探していたので。

女は粗末な木の扉の前に立つと、扉を一瞥する。
扉の表面のあちこちに剣で傷つけられた後があった。
自然に口の端から笑みがこぼれた。
道を歩くすがら、好色そうにねめつける男が後を立たないほど、
均整の取れた体つきの女ながら、
その女ははかなげな風情ではなかった。
腰には、長剣を下げていたが、
こんな場所では、どんな人間でも武器を持っているので、
珍しいものではなかった。
そんな女が一人きりでこんな猥雑な通りを一人歩いているのに、
声をかけられたり、かどわかされる事も無く、
その女はその酒場まで着いた。
その女が笑っている。
その笑みはどこか肉食獣の威嚇に似ていた。

ここなら何とか仕事にありつけそうだ。
女は満足そうに笑むと、扉を開く手に力を込めた。
扉からもれ出る光が彼女の髪をオレンジに染める。
その髪の色をもう一度見、確認するように心の中で反芻する。
「アタシ」はミューン。「黄金のミューン」


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